『 現 心 』
今日はものすごくめまぐるしい一日だったような気がする・・・。
いや、夕方まではゆっくりとしていたんだった。
午前中は用事を済まして、昼からは日用品の買い物・・・。
あの事件からようやく落ち着いて、久し振りに羽を伸ばしてたんだよね。
その後、ついついいつもの調子で可愛い服を見つけちゃって、眺めてたら急に人に押されて・・・。
気が付いたら力強い腕が私を助けてくれた。
その人はこの街の警察局長さんで、歳は自分の父よりも上のようだったが、全くそんな風には見えなかった。
その後気晴らしに、と飲みに誘ってくれて、最初は驚いたけどすごく嬉しかったんだよね・・・。
「巌徒・・・海慈、さんかあ・・・。不思議な人だったなあ。」
何だか今も夢を見ているみたいだと思いながら、はベッドにごろんと横になって今日の出来事を思い返していた。
地方警察局長である巌徒と、裁判官のチョーさん(今気が付いたけどチョーさんの名前知らない・・・)。
確かに事件に巻き込まれたとは言え、一生出会うことが無いであろう人達。
チョーさんは裁判沙汰にでもなれば(なりたくないけど)会うこともあるだろうが、さすがに一般企業OLでは地方警察局長と知り合う事は無いだろう。
そんな人達にひょんなことから出会って、ご馳走になった。
アパートに帰ってきた今でも、楽しさの名残が残っている。
二人共、自分より遥かに年上だったが、思いのほか話は弾んで楽しかった。
巌徒さんとチョーさんと3人でメルアド交換したり写メ取ったりしてなんてして・・・、今思うと失礼だったかな?
特に巌徒さんには本当にお世話になった気がする。
人にぶつかって倒れそうになったのを助けてもらう事から始まって、何から何まで奢って貰っちゃったし・・・。
・・・そして、巌徒の優しい言葉。
皮手袋からでも伝わってくる巌徒の暖かさが、今も手に残る・・・。
「巌徒さんはやっぱりこの街の警察局長だから誰でもそうなのかな・・・。」
は右手をかざしながら呟いた。
ふと、なぜそんな言葉が出てきたのか良く分からず少し困惑したが、疲れている事もあり、そのまま深い眠りに落ちていく。
事件以来、は久し振りに安心して眠った。