『 ス テ キ な ヒ ト ト キ 』








巌徒が目を覚ますと、隣には愛しい恋人。

恋人はまだ夢の中のようで、静かに寝息を立てていた。



起こさない様に巌徒はそっと彼女に腕を回そうとした。

その時彼女の腕をかすめた時に、指先に少しだけ引っかかるものを感じた。



これは・・・。



「う・・・うん・・・。」



彼女は身をよじりながら覚醒しようとしていた。


「・・・あ・・・、巌徒さん・・・おはよう・・・ございます・・・。」


隣の恋人は少しだけ気だるそうに微笑んだ。
鎖骨の辺りに昨夜の名残が見える。


「起こしちゃったかな?まだ夜明けまでは暫くかかるよ、もう少し寝るといい。」


少し目を細めて巌徒は微笑んだ。


「少し・・・眠るまで、巌徒さんとお話しててもいいですか?」


は少し寝ぼけた様子で聞いた。


「うん・・・いいよ。」


巌徒は更に目を細めて言った。
しかしはやはり寝ぼけているのか次の言葉が出てこない。
ぼーっと巌徒を見つめていた。
少し恥ずかしくなった巌徒は目を逸らしながら、先ほど気になった事を呟いた。


「傷・・・まだ残ってるんだね。」


優しくの白い腕に残る傷をなぞる。
この傷はまだ巌徒に逢う前に付けられた傷。
ナイフで切られたその傷は、数針縫われているせいか触るとまだ違和感を感じる。



この傷は自分が付けた傷も同じなのだ。



も表情がわずかに変わる巌徒に気が付いたのか、優しく呟く。


「でも・・・そのおかげで巌徒さんに会えたから・・・。」


巌徒は自分の心内を覚られたのかと少し驚いた。
彼女はいつも自分が求めている答えをくれる。


「うん・・・そうだね・・・。」


二人は一緒に微笑んだ。


暫くするとは再びうつらうつらと眠りに落ちようとしていた。

そろそろ巌徒ももう一眠りできそうだ。

巌徒はの背に回した腕を引寄せる。
そうして二人は心地よい眠りに落ちて行った。